10分前の記憶がほとんど消えてしまう父は、認知症でありながらも自分の記憶が無くなっていくことにとても不安を感じています。
なので、お世話をしている私は、なるべく私のほうから10分前の出来事を聞き返したりしないように心がけています。
ごくまれに父に記憶が残っていて、父のほうから10分前の出来事の話をされると、それについてだけ答えるようにしています。質問は避けます。
•・・・でその時お父さんはこんな事いったよね。とか
•あの時の味はどうだった?とか
•お父さんの探してる物は、さっき自分で引き出しに直したでしょう?とか
こんな聞き方や質問をすると、きょとんとした顔をして次の瞬間悲しそうな顔をする父を何度も見てきたので、最近は言わないように気をつけています。
以前は、私も配慮が足りずに「覚えてないの?」と10分前の出来事を教えたりしていましたが、たとえ優しく伝えても本人を傷つけるだけの行為でしかなかったなぁ。と思います。
昨日も、例え認知症でも、心が深く傷つくんだろうなという父の言葉がありました。
「わしは、そんな事すら忘れてしまって・・・。自分が情けない。」
昨日、お昼ご飯を一緒に食べた後、私が洗い物をするために台所に立っていると、父がこたつに入りながらこちらを見て、「ご飯は簡単でいいよ。お前も大変じゃからのう。」と言ったので、つい、「やだわ、今食べたばかりよ。」と言ってしまったんですよね。
父はびっくりしていました。
わしは、もうお昼ご飯たべたのかい?と。
そして出た言葉が「わしは、そんな事すら忘れてしまって・・・。頭の狂った老人になった自分が情けない。」でした。
表情が一変に曇り、怖い顔になっていきます。
「忘れても大丈夫!私が覚えているから。」
と、おどけたように私が言うと、父の表情が明るくなりまたいつもの父に戻りました。
自分の心が壊れていく不安が認知症本人にとって一番辛くさせる事なのではないかという気が、認知症の父を見ているとします。
最近は夜、父がベッドに入る時に布団をかけてあげて「おやすみ」を言うのですが、その布団から出てる父の顔が子供みたいにニコニコして、「これで安心して眠れるぞ。」と言います。
認知症の人には、安心感が一番なのだと、ことあるごとに感じます。
そして、認知症という症状を遅らせるのも、安心感が一番のような気がします。
これから先も、私がヘマをして、10分前の出来事を聞き返したとしても、
「忘れても大丈夫!私が覚えているから。」という魔法の言葉で父の不安を取り除いてあげられたらなと思う私です。
今日も話を聞いて頂きありがとうございました。