だんだんと日常を忘れる事が多くなった父です。
昨日の私は朝早く7時頃に実家に行きました。
いつもより1時間も早く行ったのは、なんとなくそのほうが良い気がしたから。
案の定、父は起きていて、玄関を開けると台所からガスをカチャカチャ回す音が聞こえてきました。
元栓を必ず締めるクセをつけているので、元栓を開けないままガスをつけようとしているところでした。
「おはよう。早起きだね。」と言うと、安心した顔で、変わりはないかい?と聞いてきました。
お湯を沸かすのを父とバトンタッチしてお茶の準備をしようと急須のふたを開けると、ぬるいお湯の中に何かの草が入っていました。草を匂っても何のにおいもしなかったけれど、多分庭に生えているヨモギだと思います。
お茶の葉が置いてある場所を忘れたのでしょう。それで乾燥してお茶にするのが好きだったヨモギの葉を思い出して、庭に出て摘んできて急須にいれたのでしょうね。
朝起きてお茶を飲もうとしたけれど、
•お茶の葉が置いてあるところを忘れてしまった。
•庭のよもぎを思い出して急須にいれてみた。
•熱いお湯を入れようとガスをひねったけれどつけ方を忘れてしまった。
•仕方なく前日に沸かしたポットのお湯を急須に入れてみた。
こんなところでしょう。
一生懸命生きている父に朝から涙が出そうになりました。
いつもより早く来て良かったです。
父をこたつに誘って部屋をあたたかくして、濃い美味しいいつものお茶を2人で飲みました。
朝ごはんを作ってこたつで向かい合わせで食べていると、父が「昨日は故郷に行って、山をいくつも登って疲れたよ」と言い出しました。
「昔通った峠をいくつも越えて、御大師様に久しぶりに挨拶をしてきた」とニコニコして嬉しそうに話だしました。
最近はよく昔の夢を見ているようで、特にふるさとで山登りをした夢を見ています。
いつもなら、「お父さん、それは夢でしょう?昨日は家にいたよ。」と夢だと教えていましたが、いつも夢だよと聞いた父の顔がシュンとなり、あれが夢?と困った顔になっていました。
だから今回は、「へぇ!すごいね!峠を越えたんだ。で、どうだった?両親や兄弟はみんな元気だった?」と聞いてみました。
すると、予想をはるかに超えた笑顔で、みな元気じゃったぞ。と言いながら現実と思っている夢の話をしはじめました。そして
「お前もつれていってあげたら良かったな」というので、「もっと暖かくなったらみんなで行こうね」と私が言うと満足そうな顔をしてのり巻きとお味噌汁をお代わりするほど、調子が良かったです。
いつも父から認知症の人に接するコツを教わります。
今回の件でも思いました。認知症の人の言っている事をいちいちそれは違うと正しい事を教えてあげなくても、そのままの方が良い事が多いと。
父が日々変わっていくのを見るのはやはり辛いですが、その時の父を新しい性格の父だと思って合わせていくと、認知症で変わっていく父の事をそんなに可哀そうだと思わずに済みます。
父がもっともっと認知症が進み、私が実家で面倒をみてあげられなくなるまで、出来ない事も夢の事も笑顔で寄り添えたら。
それが出来たら本当は理想です。
今日も話を聞いて頂きありがとうございました。